でも、言えない
温かくすべらかな体を抱いている。
抱き締めているその体はこらえきれない様子で身を震わせ、甘い声を漏らしている。
声が上がるリズムはアスランが腰を揺らす動きと同じ。相手もアスランも息が乱れ、余裕はない。
ひたむきにお互いをむさぼっている。
彼女だ、と思った。確信した。
彼女しかいない。
ぎゅっと抱きしめた腕の中で、その彼女の体が身じろぎした。
やんわりと肩を押す合図は、顔が見たいと、キスがしたいとせがむときの仕草だった。
しっとりと汗ばんだ肌と肌をそっと離してアスランは自分が組み敷いている相手の表情を確認しようとした。
シーツに散らばった蜂蜜色の髪、ほんのりと上気した頬、涙で潤った瞳と目があった。
「カガリ……」
自分の声で目が覚めた。
声にしたのは、夢かうつつか、わからないまま目を開いた。
夜明け前の薄暗い寝室のひんやりとした空気がアスランの声を薄めてしまっていた。